長年のネットフレンドでクリスチャン医師、山本直樹先生のFacebook記事をそのまま引用させて頂きます。
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NYのMount Sinai Morningside Hospitalの循環器ICUで看護師として働く友人が現場の様子を教えてくださいました。何かお役に立てばとご本人の許可をいただいて共有します(関心のある方へは共有して大丈夫です)。
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ゆっくりとお返事をする余裕もかなったので、今の現状をお伝えします。日本では間違った報道がかなりされているようで、現場からの声をお伝えします。
ニュースで色々なことが報道されていますが、私も夫も健康には守られて毎日元気に過ごしています。
その反面、あまり悪いことを伝えるとかえって心配されてしまうので、控えようと思ったのですが、今の現実、医療関係者として私が直面していることをお話します。今の現実をわかってもらえることで、今後、日本でも同じことが起きるかも知れないと言うことも理解してもらって、外出自粛などを積極的に進めていってもらえるとアメリカのような状況は防げると思います。
今の時点で、NY州でのコロナ患者さんの死者が合計5489人になりました。毎日死亡数が激増して、昨日(4月6日)一日での死者は過去最多の731人に上りました。まだまだ、上昇のスピードが衰えておらず、今後2週間後あたりにピークが来ると言われています。
重篤患者さんの増加に伴い、私の病院ではICU病棟が70床以上にまで増やされましたが、ICUから生きて出られた患者さんは今のところ2人だけです。お年寄りの患者さんの数も多いのですが、若くて既往歴の全くない健康な30歳代、40歳代の重篤なコロナの患者さんも増えており、自分は若いから大丈夫だということはコロナに関しては通用しない恐ろしさがあります。昨日の時点(4月6日)で、私の働くマウントサイの病院システム内で入院しているコロナの患者さんは1982人、そのうち後遺症があるにしても、自宅または施設へ退院した数は一日でたった72人。多くの方が亡くなっています。こんなに多くの死を見たことがありません。毎日沢山の方が亡くなるので、ご遺体を包む袋、納体袋も不足しています。また、霊安室はご遺体が山積みになっていて、ご遺体をフォークリフトで霊安室から運んで外の駐車場にある仮設の冷蔵庫トレーラーには運ばれていて、それを見た人たちがショックを受けています。
2日前に、他のICUでの看護師が足りないと言うことで、私が助っ人に行きました。その日、30床のその病棟で、私の12時間勤務内で7人の方が亡くなりました。そのうちの2人は私の患者さんでした。私の患者さんはみんな重篤で、助かる見込みが無いと言うことで、安楽死をすることになり、私、自らの手で2人の人工呼吸器のスイッチを切りました。2週間前にも同じく、私の手で人工呼吸器のスイッチを切ったことがあったのですが、その時は家族と離れて一人ぼっちで孤独に死を迎える患者さんの手を握って患者さんの息が途切れるまで一緒にいて、お見送りをしました。しかし、2日前はあまりにも他にも多くの重篤な患者さんがいたので、人工呼吸器のスイッチを切っても看取る時間もなく死を迎える患者さんを置いて、私は泣きながら次の患者さんの所かなくてはいけませんでした。本当に悲しいことです。もう、ここは戦場で人間の尊厳なんてものはありません。戦争中もそうやってみんな、孤独に死んでいったのでしょうね。
助かる人が少ない中で、無事に退院する患者さんがいることは私たちに希望を与えてくれます。今では、毎回、退院患者さんが出ると、館内放送でビートルズの「Here
comes the sun」の歌が流れてみんなが拍手をして、喜びを与えてくれます。
今、医療従事者の中では今後、医療従事者のPTSD(Post Traumatic Stress Disorder、心的外傷後ストレス障害)の可能性が懸念されています。
私たち、医師や看護師は患者さんの命を救うことが仕事なのに、今回のコロナのことでは、どんなに頑張っても命を救うことができずに、一日に多くの命が失われていくので、誰もが精神的に病んでしまいそうです。
病院内には多くの精神科医、臨床心理士などが24時間待機して、医療従事者の心のケアも行っています。
1995年の阪神淡路大震災の時ことを以前に新聞で読んだことがあります。当時、看護師たちは自分の家が燃えていようと、泣きながら病院に向かって看護をし、その後、多くの看護師が精神的に病んでしまい、看護の仕事を去った、と。
私たち、看護師はどんなに悲しくても、辛くて仕事に行かなければいけません。この仕事を選んでしまったからには、その責任を果たさなくていけません。
私の同僚も、子供が怖がって泣きながら「お母さん、もう、お仕事にはいかないで」と言っても、泣く子供を置いて仕事に来ています。年老いた両親と同居する同僚や小さい子供のいる同僚は家族にコロナを感染させてはいけないので、家には帰らずにホテル暮らしをする人が多くなりました。その数が増えたため、NY市内のホテルがただ、またはただ同然で部屋を医療従事者に提供しています。
私たち医療従事者も大変厳しい状況に置かれていますが、多くの市民の生活も厳しくなっています。自宅待機やレストランやカフェ、お店などが閉まってしまい、仕事ができなくて破産してしまう、スモールビジネスが激増しています。罪もないのに、コロナの件で仕事がなくなり苦しんでいる人が沢山して、その人たちとその家族のことを思うと涙が止まりません。
ご存じのように病院のベッドが足りず、コンベンションセンターや海軍の船が病院としてコロナの患者さんを受け入れ始めましたが、今、一番深刻なのは看護師、医師不足です。特に重症患者さんを看護するICUの看護師が不足して、私たちICU看護師は通常の2~3倍の量の患者さんを受け持っており、同僚たちもオーバーワークで次々に体調を崩していっているので、これからは体力と気力の勝負となってきました。
深刻なICU看護師不足を受けて、ICU看護師としての特別な訓練を受けていない一般病棟や、小児科、リハビリの看護師たちを半日のトレーニングで「にわかICU看護師」にするという、無茶なことも始まりました。飛行経験の全くない素人をにわか訓練でいきなりパイロットとして乗客を乗せて飛行機を飛行させるのと同じような、無茶な考えですよね。非常事態とは言え、患者さんの安全を考え、質のある看護を行はなくてはいけないので、看護の質の低下と安全性が心配です。もしかしたら、私たちも患者さんの死に加担しているかも知れません。とても残念です。
看護師、医師不足を解決するために各州で、免許を持っていて今は臨床で働いていない看護師や医師のリクルートも始まり、定年退職した看護師や医師にも現場に戻ってきてもらるようにしています。最悪の場合、看護学生や医学生の導入もバックアッププランとして考えられています。
医療従事者の不足もちろんのことながら、人工呼吸器やその他の医療器具の不足も深刻な中で、この状態が続けば患者さんのトリアージをして、助けられる命を選択して治療を行っていかなくてはいけないことになるかも知れません。それだけは避けたいと願っています。
患者さんの看護を通して見えない敵、コロナの怖さを見せつけられていますが、問題なのは効果的な治療がないことで、今は、防ぐことだけが多くの人の命を救うことにつながっています。日本でも、医療関係者が日本でも数週間後にアメリカのような状況になってしまうこともあるかも知れない、と言っておられますが、確かにその危険はあるかも知れません。ですから、今、一人ひとりができること、他人事とは思わずに外出自粛、自宅待機などを守っていくと、アメリカのような状況は防げると思っています。
このような厳しい状況に置かれ、哲学的な話がされるようになりました。
戦争には終わりがあります。第二次世界大戦も原爆で多くの命が失われ、戦争が終結しました。打撃も多くありましたが、平和な世界が訪れ、経済も立てなおりました。しかし、コロナとの戦いは終わりがありません。少しづつ感染者が減ったとしても、私たちがまた普通の生活に戻って、学校に行ったり、レストランに行ったり、コンサートで沢山の人が集まると、また、コロナの感染が戻ってきてしまうことが考えられます。もしかしたら、もう、私たちも前のような生活ができなくなるかも知れません。そして、私たちが予想もしていなかったくらい生活スタイルを変えることを強いられることになるかも知れません。
今日もNY州知事が必死に伝えていました。「ここまで来てしまったからには、もう、‘’自分‘’がどうのこうのと言う次元でなく、‘’私たちのため’’と言うことだ大切だ」と。外に出られない、学校に行かれない、友達にも会えない、しかも気候もどんどん良くなって外出が楽しい季節になっても、ピクニックやバケーションにも行けない、なんて、とてもみじめです。けれども、自分がみじめな思いをしたくないからと言って、外に出て人と交流したり、楽しい生活をしようとすると、他人に迷惑をかけることになります。
今、今までの私たちの生活を見直すと共に、これからの生き方を試され、みんなで心を一つにして生きていく時になりました。
私はオーバーワークで心身共にかなり参っていますが、夫のお陰で身体的な健康も精神的な部分もとても守られています。ニュースからは伝わらない、今の現実を知ってもらいたくて、色々なことを長々と書いて、心配させてしまったかも知れませんが、夫が守ってくれるので心配しないでください。そして、私は丈夫な身体に育ててもらったので、絶対に乗り切れると思います。
十分に気を付けて生活しますので、心配ご無用です!
それでは、またお便りします
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